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来訪を告げるチャイムが鳴った。リビングのソファでぼんやりしていた僕は、なにも考えず玄関のドアを開けてしまった。
覆面に全身黒の服装という怪しさフル装備を絵に描いたような来客が、視界に飛びこむ。太陽が出ている時間帯に似つかわしくない来訪者である。
訪問販売の類いではないのは明らかだった。
「こんにちは。正々堂々泥棒です」
来客はあいさつと同時に、お辞儀をした。それから土足のまま家の中に入ろうとしてくる。
あまりにも自然な動作と流れだ。すんでのところで、許してしまいそうになった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
僕はあわてて来客の腕をつかんで押さえつける。どうにか動きはとまった。
「なんでしょうか?」
「いや、こっちのセリフですよ。いったいなんなんですか!?」
腑に落ちんと言わんばかりの口調に苛立ちながら、僕は問い詰める。理不尽極まりない。
「正々堂々泥棒と申します。正々堂々と泥棒いたしますので、ご安心を。なにも心配はございません」
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