正々堂々泥棒

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「待て待て待て。正々堂々としてても泥棒はダメでしょ。安心もできない。なに考えてんだ。あと、土足で上がらないでくれ。新築の床に傷がつくじゃないか! ローンだってまだ払ってないのに」  ようやく購入できたマイホームを、こんなわけのわからんヤツに好き勝手されてたまるか。  もし実家に帰っている妻が戻ったら、どやされてしまう。 「や、新築とは知らずに。これはとんだご無礼を」  来客もとい正々堂々泥棒は素直に靴を脱ぎ、しかもそろえて外のほうへ向けた。行儀がいいのが、逆に癪に障る。  というか、そもそも新築でも中古でも土足で家に入るのは間違っていないか。  どうも調子が狂う。 「お邪魔します」  ほんとに邪魔だから帰って欲しい。僕の心の声は、けれど、正々堂々泥棒に届かなかった。  だいたいこんな真っ昼間の祝日に泥棒だなんて、リスクを負うにもほどがある。無鉄砲すぎやしないか。現に、住人の僕と鉢あわせしているし。通報や反撃をされたらなどと考えないのだろうか。
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