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「では、さっそく盗みを働かせてもらいます。お手数ですが、金目のものがあるところにご案内してください」
僕のいらぬ心配をよそに、正々堂々泥棒は律儀に尋ねてくる。
「教えるわけないですよね? 警察を呼びますよ」
「誠に申しわけございません。断りもなしに、あなたのスマホはもう盗ませてもらいました。ですので、脅しても無駄ですよ」
正々堂々泥棒は、いつどこで盗んだのかわからない僕のスマホを見せてきた。間違いなく自分のものだった。
「ちなみに、私は武術の心得もございますので、なにとぞご了承ください」
「……成す術なしか」
「まあ、そう落胆なさらずに。金目のものは、こちらで勝手に探させていただきますので」
こう宣言するなり、正々堂々泥棒は手当たり次第、あたりのもを漁りだした。
タンスから一張羅を引っ張りだすわ、冷蔵庫からは高級プリンを出して食べるわ、ベッドの下に隠した秘蔵お色気DVDを視聴しだすわ、スマホに隠した浮気相手とのツーショット写真について根掘り葉掘り聞いてくるわ、サイフからへそくりを抜くわ、とめちゃくちゃにしてきたのだ。
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