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「それじゃあ! お姉ちゃんがエンドマークを盗んでくれるの!?」
「…………ううん。それはできない」
一度は明るくなったケールの顔が絶望に変わる。
「どうしてよ! エシャルットに盗めないものはないんでしょ!? ママのお話を終わらせてあげてよ!! ……お願いだよ。ロマネスお姉ちゃん……」
涙を浮かべながら、鼻水を垂らしながら、顔を赤くしながら頼み込むケールの姿にロマネスは胸が締め付けられる思いだった。
だが、ロマネスは意見を変えなかった。
「確かにお父さんから受け継いだものを使えばこのエンドマークを盗むことはできるわ。でもね、それはしてはいけないことなの。わかってくれる?」
「何でよ! わからないよ!」
「ケール。お母さんの物語、初めて読んだけどとても愛に溢れていて素敵な物語だったわ。きっと、お母さんだってまだまだ続きを書きたがっていたはずよ。それに、主人公はまだまだ冒険を続けたがってる。だから、私やケールが勝手に物語を終わらせてはいけないの」
ロマネスはケールの頭を優しく撫で、それから指先で涙を拭った。
「だって、だって……。ママは、もういなくなっちゃったもん……」
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