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しんしんと雪が降る灰色の空の中を手紙はヒラヒラと大地へ向けて落ちていく。
まるで天使が舞い降りるような、ひとひらの雪と見紛う白い白い手紙だった。
手紙は雪混じりの冷たい風に流され、タワーから遠く離れた家の庭へと落ちていった。
暖炉の炎が揺れる部屋の窓から一人の少女がそれを見つけた。
歳の頃は17歳といったところで、クセのある赤髪を肩のあたりで一つにまとめている。
柔らかい雪が敷き詰められた庭のモミの木に引っかかっていたその手紙を、少女は白い息を吐きながら手に取った。
雪で濡れた手紙の宛名は「エシャルットへ」と拙い字で書かれていた。
林檎の果実の様に赤い封蝋を剥がしてみると手紙にはこう書かれていた。
『しんあいなるエシャルット
げんきにさてますか?
びょうきをさてませんか?
ちかごろエシャルットのなまえをきかないからしんぱいです。
もしもげんきならひとつだけおながいがあります。
●●●●●●●●というほんのエンドマークをぬすんでください。
ケールより』
エシャルットの身を案じる、どこか優しさの香る幼い手紙だった。
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