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ケールという名の少年を探すため、赤毛の少女は地方へと向かい、この町に一件しかない本屋に足繁く通った。
雪で滲んだタイトルが何なのかは全く分からなかったが、少なくともエンドマークの記された物語であろうとあたりをつけた。
そして、手紙の主の拙い字と幼い文章からきっと子供向けの本だろうと予想を立て、そこに頻繁に訪れる子供を観察した。
この町の住民は貧しく、本屋で子供向けの本を買う家庭は滅多にない。
子供たちは立ち読みをすることが多いようだったため、依頼した本のエンドマークが盗まれているかどうか、毎日同じ本を確認しにくる子供を見つけようという算段だった。
だが、子供たちは毎日訪れこぞって同じ本を読んではいても、一人として同じ子供は訪れなかった。
予告状が号外に載ってから数日が経っても、少女はまだケールを見つけられずにいた。
このままでは手紙の主の期待を裏切ってしまうと思い、少女はついに子供向けの本を立ち読みをする子供に声をかけた。
「ねぇ、この町にケールっていう男の子はいるかしら?」
キャスケット帽をかぶった少年は、読書の邪魔をされたため機嫌悪そうに振り返った。
「ケールならプリパカ通りの噴水の前に住んでるよ」
少年は無愛想に答えるとすぐに視線を本に移し、再び夢中で本を読み始めた。
赤毛の少女はむっとしながらも明るく感謝を伝えプリパカ通りへ向けて走り出した。
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