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「やっとケールを見つけた! どういうつもりであの手紙を出したのか聞かないと!」
少女は期待で胸を躍らせながら粉雪の舞う町を駆け抜けていく。
町は今夜のノエルの準備で賑わっているというのに、ようやく到着したケールの家だけは明かりもついておらず暗いままだった。
ケールの家の扉には、喪に服していることを示すリブロンのリースが飾られていた。
噴水の水飛沫が頬にかかり冷たい。
少女は意を決して扉に垂れ下がった呼び鈴を鳴らした。
鳩をかたどった金属の呼び鈴はカランカランと透明な音を雪の町に響かせた。
その音が灰色の空に吸い込まれた後も、家の中からは何の反応もない。
留守なのかと思い少女が立ち去ろうとした時、扉横の窓の奥で人影が動いた。
「ちょっと! ケール! いるなら開けなさいよ!」
少女は扉を叩きながら呼びかけるが、中からは何の反応もない。
「ねぇ! エンドマークのことで話があるんだけど! ……キャッ!」
少女が言葉を言い終えるか否か、扉が勢いよく開き中から目を赤く腫らした巻き毛の少年が顔を出した。
少女よりも十歳は年下に見える。
少女は無意識に前髪を手で直し、小さく咳払いをしてから尋ねた。
「あなたがケールね?」
「そうだけど……。お姉ちゃんが、エシャルット……?」
ケールの目は懐疑的で、いつでも扉を閉めることのできる様ドアノブに手を添えている。
少女は無理もないと思いながら、ケールの耳元で囁いた。
「えーと、……そうだ! エシャルットの使いで来たの。中に入れてくれる?」
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