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ケールの家は小さいながらも綺麗に整頓されていて、壁中に幸せそうな家族の写真が飾られていた。
「これは、お父さんとお母さん? 今はケール一人なの?」
少女の声にケールは無言で頷く。
歳の割に慣れた手つきでポットを釜にかけお茶の準備をしている様子だ。
「はい。どうぞ。ねぇ、エシャルットの使いってどういうこと? エシャルットは来れないの? エシャルットは元気なの? 病気なの? 大丈夫なの?」
紅茶の香りを楽しむまもなく、少女はケールから質問攻めにあった。
立ち上がる湯気を目で追いながら何と答えようか思いあぐねいているうちに、ケールの目から大粒の涙がこぼれ始めた。
「ちょ、ちょっと! どうしたの?」
少女は席を立ちケールの隣に膝をつき背中をさすった。
ケールは必死に涙を堪えようとして顔が赤くなり体が震えている。
「ママが、ママが……」
そう言ってケールは大きな声をあげて泣き出した。
少女はどうしていいかわからず、思わずケールをぎゅっと優しく抱きしめた。
窓の外ではノエルを彩る子供たちの明るい笑い声を、静かに降り続ける雪が包み込んでいた。
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