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ひとしきり泣いた後、ケールは少しずつ落ち着きを取り戻した。
すっかり冷めてしまった紅茶を一口飲んでから少女は尋ねる。
「お母さんがどうしたの?」
「……この間、死んじゃったんだ。ずっと病気と戦ってた」
目に再び涙が浮かぶと、ケールは小さな手でそれを力強く拭った。
「一緒にノエルを迎えられると思っていのに。ママ……ママ……」
少女は何も言わずにケールの手を握ってやった。
こんなに小さいのに暖かい。
そのままずっと、ケールが落ち着くのを待ってからゆっくりと口を開いた。
「……エンドマークを盗んでほしいって、どういうこと?」
ケールは何も答えずに椅子から立ち上がると、部屋の奥へと少女の手を引いていった。
そこには壁一面に本が並べられていた。
町の本屋など比べ物にならないほどの量で、色とりどりの背表紙が並んだ様はまるで一つの絵画のように見える。
中には古ぼけたものもあり、代々受け継がれてきたものなのだろう。
本棚に入り切らないのか床にも所狭しと本が積み重ねられていて、部屋の一角には小さな机と椅子、そして原稿用紙と筆ペンが置かれていた。
「僕のママ。小説家だったんだ」
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