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『人の幸せ』
一人の若者が荒野を歩いていました。
食べ物はほとんど底を尽き、水も水筒一本分のみ。辺りを見回しても、水や食料を調達できそうな場所はどこにもありません。
若者は背負っていた背嚢から地図を取り出します。前の街で購入したものです。
「ここに街があるって書いてあるんだけど……」
道を間違えたのでしょうか。草木一本、生えていない荒野に砂埃が舞うだけです。人が住んでいるとは到底思えません。
「まいったなぁ。ここから引き返して、食料が足りるかどうか」
若者は悩みます。
来た道を戻れば三日後には、前の街に戻れます。しかし、食料はどう切り詰めても二日分しかありません。
人間三日間食べず飲まずでいても生きられると言いますが、それは身動きが取れない状況で消費エネルギーを限りなく少なくした場合に限ります。
歩いて野を越え、山を越えるような、体力を消耗するような場合には当てはまらないと若者は考えています。かといって、地図を頼りにこのまま進むというのも考えものです。
若者は悩みました。
結論を出しました。
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