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そして、何か有ると「結衣さんは一日家に居るんだから」とか
「子供もいないしね~」と言っては、面倒な事は、全部、結衣にさせる。
「もう~」結衣が怒って、春斗に言っても「仕方ないよ、うちは長男だし」
と、春斗は、何でも長男だからと、引き受ける。
「お人よし過ぎるわっ」ますます結衣は、腹を立てる。
春斗とは、お見合いだった、優しさが一番だよと、勧めてくれた
母の言葉は、本当だったが、優しさにも、度合いが有る。
母の病院代や、タクシー代、義姉たちの飲み食いに使うお金で
結衣たちには、貯金する余裕も無かった。
それまで貯めていた、春斗と結衣の貯金は、結婚式で使ってしまっていた。
こんな調子だと、何か有った時に困る、その思いは的中した。
義母が、亡くなり、葬儀は、出来るだけ簡素にと思っていた結衣に
「うちの人の、会社の人も来るのよ」「そんな貧弱な葬儀、出せないわよ」
二人の義姉はそう言って、葬儀の手配だけは、自分達でしたのだが
葬儀に掛かった費用は、320万万円だった。
だが「私たちは、もうこの家から出た人間だからね~」と、二人の義姉は
僅かな金だけ置いて、帰って行った。
「どうするの?」「仕方ない、ローンで払おう」春斗は、ローンを組んだ。
その頃から、春斗は体調が悪い様で、苦しげだった。
母を失った悲しみで、落ち込んでいるんだ、結衣はそう思い
「ローンを組んだばかりなのよ、落ち込んでいる場合じゃないわよ
頑張って!!」と、励ましたが、調子は上がらず
月に一度の夫婦の営みも「ごめん、出来ないんだ」と、背中を向ける。
義母の看護もしなくて良くなり、やっと、二人っきりになれた夜だ。
その気になっていた結衣は「もう~良いわよっ」と
夫の寝室のドアを、バタンッと強い力で閉め
『まったくもう~欲情するのは、男性だけじゃないんだからね』と
ぷりぷり怒りながら、自分の部屋の布団に入る。
だが、なかなか眠れなかった。
12時、1時、2時、まだ眠れない「仕方ない」
結衣は、自分で、自分の体を慰めた、あっという間に上り詰め
荒い息を吐きながら、夫が居るのに、一人遊びしなくちゃいけないなんて
情けないな~と、気持ちは悲しむが、とりあえず満足した身体は
結衣を、眠りに誘ってくれた。
そんな日が続いた、ある朝、春斗はパジャマのまま、足を抱え込んで
壁にもたれ、顔を抱えた膝に埋めていた。
「どうしたのよ、遅刻しちゃうわよ」結衣が、そう声を掛けると
涙だらけの顔を上げ「もう、会社に行きたくない」と、言った。
「ええっ、どうしちゃったの?」真面目に、無遅刻で会社に行っていたのに
「嫌なんだ、嫌なんだよ~」春斗は、子供のように叫んだ。
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