奈落への始まり

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結衣は、はっとした、結婚する前までは、病院で事務をしていた。 だから、少しは病気に対する知識も有った。 この状態、、鬱病だわ「分かった、じゃ、会社には行かなくて良いから 病院へ行こう、ねっ」「会社、休めるかな~」春斗は、グズグズと言う。 「休めるわよ、そんな状態じゃ、仕事にならないでしょ」「う、、ん」 「私が、電話してあげるから」結衣はそう言うと 主人の体調が悪く、今から病院へ行くので、今日は、休みますと、伝えた。 「病院から帰ったら、来てくれませんかね~休みが続いたので 仕事が、滞っているんですよね」と、電話に出た上司は言う。 「分かりました、でも、たぶん無理だと思います」 『休みが続いたって?義母が亡くなったから、仕方ないでしょうが』 結衣は、心の中でそう言って、相手の返事も聞かず、電話を切った。 そして、自分も服を着替え、春斗の着替えも手伝って 前に勤めていた病院、深沢総合病院へ行く。 心療内科の待合所に行くと、隣に母親らしい年寄りを連れた、若い男が居て 軽く会釈した、結衣も、軽く会釈して、春斗を促し椅子に座らせる。 直ぐに「早瀬さん」と呼ばれて、その親子らしい二人は 診察室に入って行った、暫くして、二人は出て来て、代わりに 「牧原さん」と、結衣たちが呼ばれた。 先生の前に座ると「おや、結衣ちゃんじゃないの」 心療内科の鈴木が、驚いた顔で言う。 結衣は、この病院へ勤めていたので、鈴木とは顔見知りだった。 「はい、結婚して、牧原になったんです」 「そうか~、それで、今日はご主人の事なんだね」「はい」 鈴木は、問診票を読み、春斗にも詳しい話をさせた。 春斗は、会社では、上司に無理難題を押し付けられ、部下からは そんな無理は出来ないと、そっぽを向かれ、客からは、クレームが多く その処理に、きりきり舞いをする、毎日だと言った。 結衣は、さっきの電話を思い出し、春斗の立場が、どんなものか 良く分かって来た、真面目で、お人よしの春斗は、どんなに無理を言われても 一生懸命、それに応えようと、頑張り続けていた様だ。 その上、家に帰れば、母や結衣から、愚痴ばかり聞かされ、姉達からは 長男だからと、面倒な事を、全て押し付けられていたんだ。 これじゃ、私だって、鬱になるわ、結衣は、そう思った。 「よく分かりました、お薬を飲んで、気長に、この病気と闘いましょう」 鈴木はそう言うと、結衣だけを呼んで「会社、一年ほど休めるかい?」と聞く 「無理ですね~」「じゃ、辞めさせた方が良いよ、今は、家でのんびりさせて 少しずつでも、良くなるようにしよう、良いかい、分かっていると思うけど 頑張れとか、こんな事も出来ないのとか、言っちゃ駄目だよ」 「はい、気を付けます」「長くなるからね~君もへたばらないようにね」 「はい、有難うございました」二人は、薬を貰って帰って来た。 「春さん、先生がね、仕事は辞めなさいって」 「でも、仕事をしないとお給料が、、」 「大丈夫よ、春さんは、今まで頑張って来たんだからね 今度は、私が、頑張る番だよ、仕事を探して、働くから心配いらないよ」 「本当に、会社、行かなくて良いの?」春斗は、不安そうな顔で言う。 「うん、明日行って、退職届出しておいでよ」「明日、、、」 「大丈夫、私も、会社まで一緒に行ってあげるし、待ってるから」「うん」
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