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翌日は、春斗の病院だった「先生、一昨日から、良い調子なんです」
結衣がそう言うと「良かったね、でも、このまま良い時が続くと
期待しないでね、悪くなると、期待した分、結衣ちゃんが落ち込むから」
「はい」そう返事はしたが、春斗の調子が良いと、やっぱり嬉しい。
病院からの帰りに、商店街の中を歩いていると、春斗が足を止めた。
何だろうと、目線の先を見ると、カメラが有った。
「春さん、カメラが欲しいの?」「うん、でも、良いんだ
画材を買ってもらったばかりだし、、」そういう癖に、そこから離れない。
「カメラじゃないと駄目なの?」写真なら、スマホで十分だと思う。
「うん、写真に撮って帰れば、家に帰ってから、それを見ながら
絵を描けるからね」「じゃ、買ったら?」「えっ」春斗は驚いた顔緒を向ける
「良いの?」「うん、私の、やりくり上手は知ってるでしょ
それに、もう二人だけの生活になったから、大丈夫だよ」
「ほんと?じゃ」春斗は、店に入り、一番安いカメラを手に取った。
「それじゃ、良い写真は撮れないんじゃない?せめて、こっちにしたら?」
結衣は、ちょっと高い方を、春斗に渡す。
「わぁ~これは良いね~これ下さい」春斗は、大喜びで
そのカメラを店員に渡した。
「有難うございました」店員の声に送られ、カメラの入った袋を下げて
「結衣さん、有難う」春斗は、零れる花のような笑顔で、お礼を言う。
ああ、この笑顔だ、お見合いの時、この笑顔を見て、結婚を決めたんだった。
だが、この数年、この笑顔を見る事は、全く無かった。
良かった、元の春さんに、戻ってくれて
これからも、この笑顔を、絶やしたく無い、結衣はそう思う。
春斗は、家に帰るまで待ちきれず、途中で箱を開けて、カメラを取り出し
結衣の姿を、何枚も撮る。
結衣は笑いながら「私なんかより、他の物を撮ったら?」と、言ったが
「今は、結衣さんを撮りたい」春斗は、家に帰り着くまで、結衣を撮った。
画材と、カメラと、弁当を貰って、春斗は機嫌よく、留守番をし
仕事から帰って来た結衣に、その日、撮った写真や
描いた絵を見せてくれる、いう事は無いほど、調子の良い春斗だったが
そんな春斗を、裏切る事になる、土曜日になった。
11時に、義之から電話が有り、昼食後、風呂に入って、待つ様にと言われる
そう言われて、弁当を食べたが、どんな味なのか、分からなかった。
風呂から出て、部屋着に着替え、カーテンを引いた
薄暗い義之の寝室で待つ、7年前と、同じ様に、、。
やがて、義之が来て、風呂に入る気配がした後
寝室へ来る足音がする、その足音が、近づくほどに
結衣の胸の鼓動は、大きく激しくなって行く。
「お待たせ」義之は、そう言うと、結衣を抱きしめ、優しくキスをした。
そして「やっと、私のもとへ帰って来てくれたね、嬉しいよ」と囁く。
黙っている、結衣の身体に、義之の慣れた手が、真っ赤な花を咲かせて行く
「あ、あぁ~」抗えない、大きな喜びに翻弄され、義之の手のままに
結衣は、ただ頂点に向かって登って行く。
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