義之と早瀬

3/7
前へ
/25ページ
次へ
翌日は、春斗の病院だった「先生、一昨日から、良い調子なんです」 結衣がそう言うと「良かったね、でも、このまま良い時が続くと 期待しないでね、悪くなると、期待した分、結衣ちゃんが落ち込むから」 「はい」そう返事はしたが、春斗の調子が良いと、やっぱり嬉しい。 病院からの帰りに、商店街の中を歩いていると、春斗が足を止めた。 何だろうと、目線の先を見ると、カメラが有った。 「春さん、カメラが欲しいの?」「うん、でも、良いんだ 画材を買ってもらったばかりだし、、」そういう癖に、そこから離れない。 「カメラじゃないと駄目なの?」写真なら、スマホで十分だと思う。 「うん、写真に撮って帰れば、家に帰ってから、それを見ながら 絵を描けるからね」「じゃ、買ったら?」「えっ」春斗は驚いた顔緒を向ける 「良いの?」「うん、私の、やりくり上手は知ってるでしょ それに、もう二人だけの生活になったから、大丈夫だよ」 「ほんと?じゃ」春斗は、店に入り、一番安いカメラを手に取った。 「それじゃ、良い写真は撮れないんじゃない?せめて、こっちにしたら?」 結衣は、ちょっと高い方を、春斗に渡す。 「わぁ~これは良いね~これ下さい」春斗は、大喜びで そのカメラを店員に渡した。 「有難うございました」店員の声に送られ、カメラの入った袋を下げて 「結衣さん、有難う」春斗は、零れる花のような笑顔で、お礼を言う。 ああ、この笑顔だ、お見合いの時、この笑顔を見て、結婚を決めたんだった。 だが、この数年、この笑顔を見る事は、全く無かった。 良かった、元の春さんに、戻ってくれて これからも、この笑顔を、絶やしたく無い、結衣はそう思う。 春斗は、家に帰るまで待ちきれず、途中で箱を開けて、カメラを取り出し 結衣の姿を、何枚も撮る。 結衣は笑いながら「私なんかより、他の物を撮ったら?」と、言ったが 「今は、結衣さんを撮りたい」春斗は、家に帰り着くまで、結衣を撮った。 画材と、カメラと、弁当を貰って、春斗は機嫌よく、留守番をし 仕事から帰って来た結衣に、その日、撮った写真や 描いた絵を見せてくれる、いう事は無いほど、調子の良い春斗だったが そんな春斗を、裏切る事になる、土曜日になった。 11時に、義之から電話が有り、昼食後、風呂に入って、待つ様にと言われる そう言われて、弁当を食べたが、どんな味なのか、分からなかった。 風呂から出て、部屋着に着替え、カーテンを引いた 薄暗い義之の寝室で待つ、7年前と、同じ様に、、。 やがて、義之が来て、風呂に入る気配がした後 寝室へ来る足音がする、その足音が、近づくほどに 結衣の胸の鼓動は、大きく激しくなって行く。 「お待たせ」義之は、そう言うと、結衣を抱きしめ、優しくキスをした。 そして「やっと、私のもとへ帰って来てくれたね、嬉しいよ」と囁く。 黙っている、結衣の身体に、義之の慣れた手が、真っ赤な花を咲かせて行く 「あ、あぁ~」抗えない、大きな喜びに翻弄され、義之の手のままに 結衣は、ただ頂点に向かって登って行く。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加