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俺がプロポーズをした時に、彼女に渡した婚約指輪。
血がべっとりと付き、輝きを失ったその指輪は、まるで野犬にでも噛み千切られたようにズタズタになった人間の指にはめられている。
あれが由唯奈の指…?そんな……
「私、刃物を持っていくのを忘れちゃってね、仕方なくスコップをあの女の手に突き刺したの。…ふふっ、すっごく痛がってた。なのにあの女、これ見よがしにその指輪だけは守ろうとしたのよ…。本当に腹が立つ」
チッと、女が舌を打ったのと、ほぼ同時だったと思う。鉄骨に引っかけ続けていた手首の縄を、やっと切ることができたのは。
「がっ…!!」
無我夢中だった。
縄で縛られたままの足でなんとか立ち上がり、女の顔面目掛けて力いっぱい、拳をふるった。
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