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「あの時は、あぁするしかなかった。……あなたから離れるしかなかったの」
そう言って、ポロポロと涙を流すこの女に、いったい俺はなんと言葉を返せばいいのだろうかーーー
「…つまり、俺と君は前世で恋人同士だったと?」
半信半疑でそう問いかける俺に、彼女はこくりと頷いた。その瞬間、彼女の頬をつたった涙が、冷え冷えとしたアスファルトにポタリと落ちる。
その光景すらも冷静に見ることができている俺は、頭がイカレてしまったのかもしれない……。
「私は武家の元に生まれたけれど、あなたは平民だった。身分が違うという理由で、周りから関係を反対された私たちは、欠落するしかなかったの。だけど……」
「結局俺たちは追い手の者に見つかった…と。君は俺だけでも助けようとして、俺から離れて一人で逃げた。そして……」
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