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読んだときの音の並びも、書いたときの全体のバランスも美しく整った友人の姓名。
あんなにきれいなのに、結婚を機にそこから苗字だけが置いてけぼりになる。
そう思うと招待状はどこか寂しく、けれども彼女の人生の一区切りとしてこれが最後の晴れ姿なのだと、やはり華々しさも感じた。
私もいつか佐藤紅音から佐藤だけを置いていく日がくるのだろうか。
もしそのときがきたら私の名前にも思いっきりオシャレをさせてやりたい。紙もデザインも凝って、フォントだって高いやつにする。そして二度と無駄なセールス電話に翻弄されない新しい人生を祝おう。
なんて息巻いてみても、現状のところ結婚はおろか恋人ができる気配さえないけれど。
「すいません、お先に失礼します」
16時を過ぎ、帰り支度を整えた松本さんがバタバタと去っていった。
入れ替わりに16時半からの私のクラスを受講する生徒たちがドヤドヤやって来る。
わざわざ事務室を覗いて「佐藤先生こんにちは」と声をかけてくる彼らに私は笑って手を振った。
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