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たとえ、幼き頃より……憧れていた王太子殿下からの宣告であれ、告げられたからには……大人しく、去るしかない。聖女として参上してから長い年月を過ごしてきたが……いくらか寂しくはあっても、正直ホッとしていた。
「やれやれ、とうとう追い出してくださったか」
「こわいこわい。聖女ではなく、魔女ですわ。ガラクタしか召喚出来ないのですもの」
「『渡しの聖女』当時の雰囲気も霞んでいるしな? さっさといなくなってほしかったわい」
コソコソ言っている貴族達だが、大抵が言いたい放題。
(これで……いい。役に立たないなら、それで)
毎日毎晩のように、聖女としての重圧で眠れぬ夜を幾度となく過ごし、召喚の失敗のたびに感じる絶望を味わうよりは。
とは言え、自分でさっさと城から出るわけではなく……流刑地にまで粗末な馬車で送り届けられることになった。
かつては、国随一の聖女と呼ばれていたのが……情け無い終わり方だ。
降ろされた時は、その場で刺殺されると思いかけたが……そこまで、王族が無慈悲な仕打ちをすることを画策していたようではなく。
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