第1話 役立たずの聖女

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 兵士らは、私を降ろすとさっさと馬車を動かして来た道を戻っていったのだ。 「……命があっても」  役立たずの召喚魔法以外、何も出来ない女でしかない。  今年で十八になるが、聖女として一生を過ごす覚悟でいたから……あの王太子殿下と、もし添い遂げられたら、と思う以外の望みはなかった。  しかし今は、それも叶わない。 「……これから、どうしようかしら」  自決したことで、来世を約束されるわけではない。  むしろ、自決は最後の最後に使う手段だ。簡単に決めてはいけない。  とりあえず……馬車の揺れで相当疲れたので、適当な木にもたれかかると。  ドサッ。  いきなり、木の上から何かが落ちてきた。  ちょうど、私の膝上に落ちてきたそれに、衝撃などの強い痛みは感じなかったが。 「……精霊?」  銀色と黒が交互に並ぶ模様とふわふわの毛並み。  魔物でも、聖獣でもない……重みを感じないそれは、精霊と言われているものに間違いないだろう。  そっと触ってみると……上質な綿のようで、思わず何度も撫でてしまった!
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