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第2話 聖女の召喚魔法
とってもふわふわ。
まるで、王城では当たり前に使わせていただいていた……極上のタオルのように。しかしながら、とても艶やかでいた。
夢中になって触り続けていると、さすがに嫌がったのか……精霊がモゾモゾと動き出した。
慌てて手を離すと、精霊はくるんと半転して向きを変えた。顔の部分はよく見えないが、口と鼻のような部分はわかった。口が少しだけ開いて、歯か牙のようなものが見えた。
噛まれる……と思ったが、精霊は何故か、私が添えていた右手の甲をぺろぺろと舐め出した。実体化しているので、舌の感触が少しくすぐったい。
「……ふふ」
聖女として育てられた時間が長かったせいか。
こんな風に、動物や精霊に懐かれたことなど一度とてなかった。そもそも、そう言った愛玩動物などは遠ざけられていたから。
だから、こんな事が少し嬉しくて涙をこぼすと……精霊はさらに、私の手の甲を強く舐めてきた。
「……お腹、空いているの?」
精霊の食物……座学で多少は勉学はしたけれど、そのような知識は特に得ていない。そもそも、聖女には必要ないと育てられてきたから。
今まで、どれだけ籠の鳥として育てられていたか……よくわかった。そんな人間を、要らないとわかれば捨てる王族の傲慢さにも……今更だが、少し呆れてしまう。
とは言え、今は関係ない。
目の前にいる精霊を何とかしないと。
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