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「……ダメ元でも」
私は精霊を膝上にしっかり乗せて、両手を空に向けて伸ばした。
『……あまねく、光』
空に、紫の光と紋様が広がる。
召喚魔法を顕現する時に浮かぶ、魔法陣のようなもの。
屋外で披露するなんて久しぶりだけど……うまく起動してくれたようだ。集中力を途切れないように、言祝ぎの詠唱を唱えていく。
『光、光よ。我が身に宿る光を使え。彼の地とこの地を繋ぐ……綱となれ』
魔法陣が降りて来て……私と精霊から少し離れた地面にくっついた。光が走り、紋様を広げ……さらに大きな陣となっていく。
『とこしえに結ぶ、盟約を紡ごう。我が望みを、今ここに召喚せん!!』
紋様から、目を開けられないくらい強い光が辺りを包み込む。
それもほんの一瞬だったが……やがて、光と陣が消えたあとには。
「…………やっぱり」
食べ物でもなんでもなく。
金属の集合体のような『ガラクタ』か『ゴミ』だった。
魔導具でも何でもなく、いびつな金属の塊でしかない。
【こちら、緑の世界では『ゴミ』です】
と、聖女が持つ鑑定眼でステータスを見ても、説明文にはそれだけだった。
「……ぐす」
やはり、私は追放された元聖女。
かつては出来ていた召喚魔法が満足に扱えなくなった……欠陥品でしかない。
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