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二本の足で立ち上がり、やれやれと言った具合に肩を落とした。魔物でも聖獣でもない。
実体化を持つ……精霊そのものなのだろう。こんな風に、気さくに話しかけてくれる存在だとは思わなかったが。
「…………その」
『おん?』
「お聞き……しても、よろしいでしょうか?」
『おう! ええで?』
胸を反るように腰に手を置く仕草を可愛らしく思ったが、ここは気持ちを切り替えようと……私は地面の上でも最敬礼を披露した。
「私は、モーディアス王国の『渡しの聖女』と呼ばれていた者にございます。先ほど、貴方様が口にされたのは……私が召喚した異界の異物。お身体に差し障りないでしょうか?」
『異界の! なるほど。だから、今まで食うたことのない絶品な味わいやったんか!!』
「美味……でござい、ますか?」
『おん! 俺ら精霊は魔力以外にも糧にするもんがぎょーさんある。人間には異物とか言われる『ゴミ』なんか……俺の大好物なんや!!』
「……好物」
精霊の口に合う物?
私は……王族の要望に応えるように、以前は数多の財を召喚したけれど。それが出来なくなった今でも……お役に立てた?
その事実を理解出来ると……我慢が出来ず、先ほどよりも多くの涙を、流してしまった。
『な、なんやなんや!? 姉ちゃん、どないしたん!?』
「い……いえ。その……嬉しく……て」
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