第1話 いじめ

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第1話 いじめ

「神様は不公平だ。」 ボソッと口に出る言葉、ただ自分が情けないと思いたくなくて勝手に言ってしまう。 「いじめ」、誰しも1度はこの言葉を聞いた事がある。ニュースにだって時々流れてくる。自分は大丈夫だろうと皆が思っている。私もそう思っていた。でも、そんなものは急に自分の方へ流れてくる。 私の名前は佐々木優奈、中学2年生。私は中学に入ってからたくさんの友達に恵まれた。一緒に遊んで食べて楽しい中学校生活を送っていた。 でも、私の人生は大きく変わってしまった。 それは、中学1年の冬…… 「ねぇねぇ、この間の漫画もっかい貸してくれない?」 「えぇ〜、また〜?」 「おねがーい、優奈が持っている本買いたいけどお金無くて〜。それに、あの本の内容が好きなんだもーん」 と友達の莉央、春菜たちと楽しく話しながら廊下を歩いていた時… 「ねぇ、いい加減にしてくれない?」 「グスグス、ごめんなさい」 「謝れば済む話しじゃないんだけど」 廊下の曲がり角から泣いている子の声とその子に怒っている声が聞こえてきた。私は声がしている方に走った。 (どうしたのかな?何かトラブル?) 本気で走ったのか久しぶり過ぎて死にそうだった。 「はぁ…はぁ…」 息が苦しかったけど、こっそり私はトラブル?になっている所を覗いてみた。 (…!?) すると、泣いている女の子は全身アザだらけになって倒れていて、その上からバケツに入った水をその子にかけていた。 私はあの女の子が誰かと似ていると思った。 「ねぇ、優奈。あれってうちらと同じクラスの佐藤しずくちゃんじゃない?」 「え?うそ?」 と目を細めてじっと見た。 「あっ、ホントだ!しずくちゃんだ。もう1人は先輩かな?」 そう考えながら見ていたら、先輩みたいな人はしずくちゃんのお腹を思いっきり蹴っているのが目に入った。 「うっ…!痛い、やめて…」 しずくちゃんは抵抗はしているけど、ずっと蹴られっぱなしだった。とうとう我慢できなくなった私は (これ以上は見てられない!止めないと!) と、すぐさま、行こうとした。そしたら… 「何!?」 莉央たちに手を握られて動けなかった。 「何してるの、優奈!行ったらダメ!!」 「離して!はやく、助けないと…」 そう言っても春菜と莉央は離してくれなかった。 「ダメだよ。助けたら優奈がターゲットにされちゃうよ」 「そうだよ。だから…ね…?」 と忠告してくる2人の姿をみて思った。 (たしかに…。だから、誰も助けなかったのね。) ターゲットにされたとしても、間違ったことをしようとしていないと思った。だから、私は腕をはらい、2人を無視して走った。 「あっ!優奈、ダメだって」 もう、2人の声なんて聞こえないぐらい必死だった。 「やめなさい」 私はしずくちゃんの前に立った。 「優奈さん…?」 「もう、大丈夫だよ」 しずくちゃんは安心したような顔をしていた。 「あんた誰よ」 しずくちゃんに水をかけた女が聞いてきた。 「1年1組 佐々木優奈です。あなたは誰ですか?」 「2年3組 野村心愛よ」 と自己紹介してくれた。しかも先輩だった。 私は驚くことも無く、話を続けた。 「何をしているんですか?」 「みて、分からない?彼女をしつけている所よ」 と自慢げに話していた。 「しずくちゃんが先輩に何をしたって言うんですか?」 「彼女ね、入学してきてから気に入らなかったから、その日から暇つぶしに遊んであげてるのよ」 笑いながら言う彼女に腹が立った。しずくちゃんの体からみていじめだった。 「いじめをしてもいいと思ってるんですか?」 「いじめ?何を言っているのかしら。これはゲームをしているだけよ」 「…ゲーム?」 「そう、ただのゲーム」 そうは言っているけど私の中ではゲーム=いじめだとすぐに分かった。 「なるほど、結局はいじめなんですね。この学校にはいじめはないと思っていましたが…。もうこれ以上、しずくちゃんを傷つけないでください!!」 「はぁ!?あんた、先輩に逆らっていいと思っているの?生意気ね、ブスのくせに…」 先輩は少し切れているように見えた。 「生意気で結構です。それに、私はブスだけど先輩みたいに根は腐っていませんので…」 私の発言で怒りが更にエスカレートしていった。 言い合いをしていると、先輩の取り巻きたちだろうか、先輩の方へ来て何かを話していた。 「……それはいいわね。」 落ち着いたのか先輩は話し出した。 「…まぁ、いいわ。その子とゲームはお終いにしていいわ。でも、明日からが楽しみね」 そう言って取り巻きたちと一緒に去っていった。 先輩が見えなくなったところで、私はしずくちゃんの所へ行った。 「大丈夫?」 「ありがとう。でも、こんな事して優奈さんがゲームのターゲットになりますよ」 「大丈夫だよ、気にしないで」 (これで、一安心かな) 先輩はもうゲームをやめたと思っていた、私だったけど、その考えは相当、甘かった。 まさか、明日からあんな目に遭うなんて……
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