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第3話 心の傷
「…な。…うな!」
(なんだろう、母さんの声がする。)
「ゆうな!」
(!!)
目を開けると、そこには母の姿があった。
「ここは、どこ?」
「ここは病院よ。帰ってくるのが遅いから、敦に見に行ってもらったら、貴方がアザだらけで倒れてるって電話があったから…」
「そう…」
敦は私の唯一の弟である。
ダッダッダ!
ガラッ!
「姉ちゃん!大丈夫?」
必死で走ってきたのか、息が荒かった。
「うん、大丈夫だよ。ごめんね、心配かけて」
「そんな事ないよ。はい、さっき自販機でお茶買ってきたから飲みなよ」
「うん、ありがとう」
敦はとても心配性で口は悪いけど優しいやつだ。私がお茶を飲んでいると、敦が…
「ねぇ、姉ちゃん、そのアザ誰にやられたの?」
その一言で空気がガラッと変わった。静まり返ってただただ気まずかった。
「大丈夫だよ。階段から落ちちゃって、そのまま教室に戻ったら頭が真っ白になって、アハハハ。」
なんて誤魔化した。いじめなんて言ったらきっと心配させちゃうだけだから…。
「もしかして、いじめられてるんじゃない?」
(ビクッ!)
「そうよ、何かあったなら言いなさい。」
敦も母さんも勘が鋭い。
「ううん、いじめられてないよ。それに、すっごく楽しいよ、学校は」
「そう、ならいいんだけど」
病院での会話は終わりにして、家に帰った。
すると、テレビを付けっぱにしたのか、ニュースが流れ出した。
『昨日、○○中学校で○○という女子中学生がいじめにあい、自殺しました。』
と……
それを見た瞬間、体が固まった。亡くなった子の親は泣いていて、誰がいじめたかも分からないくらいに、心配して泣く振りをしている子だっていると感じた。
(もしも、私が自殺したとしたら、親は泣くだろうな。先輩たちは、泣く真似をして自分じゃないと思わせるのか、それとも反省してくれるのかな)
「……」
『あんたなんか死んじゃえ』
『近づかないで、菌がうつる』
何回も頭に残る、数々の言葉の暴力。それを思い出す度に、頭が痛くなる。そして、今日も…
(私はいない方がいい?死んでも誰も悲しまないから…)
って言われたことを何度も何度も繰り返してる。そして…
ズキッ!
「痛い…」
鋭い痛みが頭を巡る。耐えきれなくなった私は床に倒れこんだ。
「姉ちゃん!大丈夫?母さん、母さん!姉ちゃんが…」
リビングに入ってきた弟の声が聞こえてきた。でも、それは少しずつ小さくなって聞こえなくなった。
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