第3話 心の傷

1/1
前へ
/3ページ
次へ

第3話 心の傷

「…な。…うな!」 (なんだろう、母さんの声がする。) 「ゆうな!」 (!!) 目を開けると、そこには母の姿があった。 「ここは、どこ?」 「ここは病院よ。帰ってくるのが遅いから、敦に見に行ってもらったら、貴方がアザだらけで倒れてるって電話があったから…」 「そう…」 敦は私の唯一の弟である。 ダッダッダ! ガラッ! 「姉ちゃん!大丈夫?」 必死で走ってきたのか、息が荒かった。 「うん、大丈夫だよ。ごめんね、心配かけて」 「そんな事ないよ。はい、さっき自販機でお茶買ってきたから飲みなよ」 「うん、ありがとう」 敦はとても心配性で口は悪いけど優しいやつだ。私がお茶を飲んでいると、敦が… 「ねぇ、姉ちゃん、そのアザ誰にやられたの?」 その一言で空気がガラッと変わった。静まり返ってただただ気まずかった。 「大丈夫だよ。階段から落ちちゃって、そのまま教室に戻ったら頭が真っ白になって、アハハハ。」 なんて誤魔化した。いじめなんて言ったらきっと心配させちゃうだけだから…。 「もしかして、いじめられてるんじゃない?」 (ビクッ!) 「そうよ、何かあったなら言いなさい。」 敦も母さんも勘が鋭い。 「ううん、いじめられてないよ。それに、すっごく楽しいよ、学校は」 「そう、ならいいんだけど」 病院での会話は終わりにして、家に帰った。 すると、テレビを付けっぱにしたのか、ニュースが流れ出した。 『昨日、○○中学校で○○という女子中学生がいじめにあい、自殺しました。』 と…… それを見た瞬間、体が固まった。亡くなった子の親は泣いていて、誰がいじめたかも分からないくらいに、心配して泣く振りをしている子だっていると感じた。 (もしも、私が自殺したとしたら、親は泣くだろうな。先輩たちは、泣く真似をして自分じゃないと思わせるのか、それとも反省してくれるのかな) 「……」 『あんたなんか死んじゃえ』 『近づかないで、菌がうつる』 何回も頭に残る、数々の言葉の暴力。それを思い出す度に、頭が痛くなる。そして、今日も… (私はいない方がいい?死んでも誰も悲しまないから…) って言われたことを何度も何度も繰り返してる。そして… ズキッ! 「痛い…」 鋭い痛みが頭を巡る。耐えきれなくなった私は床に倒れこんだ。 「姉ちゃん!大丈夫?母さん、母さん!姉ちゃんが…」 リビングに入ってきた弟の声が聞こえてきた。でも、それは少しずつ小さくなって聞こえなくなった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加