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コツコツと、静かな病棟に足音が響く。足音の主はある扉の前で止まると、ゆっくりとノックし、開けた。
中には、病服を着た一人の男性がいた。弱々しい顔に、目の下には真っ黒な隈だ。そんな彼の口角がほんの少し上がった。
「砂原さん、来てくれたんだ。何ヶ月ぶりかな」
廊下に立ったままの彼女はしばらく目を伏せていたが、意を決したように顔を上げた。息が吸われ、微笑みが浮かぶ。
「うん……久しぶりだね、鈴野くん」
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