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「我慢しなくていい」
「……え」
「ありがとう。砂原だって、菜緒歌……親友を亡くして泣きたかっただろう」
「何……え……」
「でもそんな気持ちを堪えて、俺を励まそうと……ごめんな。つらかったよな」
「……!」
彼女がヒュッと息を吸い込む。
「砂原、泣いていいからな」
……気づいたら、すでに彼女の目にはたっぷりと涙が溜まっていた。
涙は、電灯の光を反射しながら揺れて……。
かと思ったら、彼女の喉から、全てを切り刻むような悲しい叫びが溢れてきた。
「……あ、ああ……!」
彼女は何度も咳き込みながら、大声で泣き始めた。ストッパーなど全部外して、思うがままに。
今まで堪えていた彼女の痛みが、全て放出されるようだった。
「何で死んじゃったの、突然すぎるよ。菜緒歌ぁっ……」
泣き喚く彼女の肩を、俺はそっと包んだ。
この叫びは隣の部屋にも響いているだろう。うるさいと苦情がくるかもしれない。でも、今日ばかりは勘弁してほしいと思った。
・・・
「泣かせてくれてありがとう。すっきりしたよ。……鈴野くん、本当に変わったよね」
どれほどの時間が経っただろうか。やっと涙を枯らした砂原はそう言った。
「え?」
「だって鈴野くん、ちょっと前までは私が何を言っても、放っとけ、俺の気持ちが分かる訳ないって、怒鳴って……電話もずっと出てくれなかったし」
ぎくりとした。俺は目を伏せ、「……その節はごめん」と呟く。
「いいの、分かってる。早くに両親を亡くして一人ぼっちの鈴野くんに寄り添ってくれたのが、菜緒歌だもんね。……そんな最愛の人を亡くして、鈴野くんが狂うのも分かる。だから私は、鈴野くんを立ち直らなせなきゃって思った。自分の気持ちに蓋をしてでも」
「……」
「でも私だって、大好きな親友を亡くして苦しかった……。私も本当は壊れたかった。でも、私までもが壊れるわけにはいかないし、頑張って、堪えて……」
「小夜」
俺は彼女の頭を優しく撫で「ありがとな」と言った。
乾いたと思っていた彼女の瞳から、また一つ涙が零れ落ちた。
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