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「えっ」
思わず声が出た。
俺が今まさに告白しようとしていた内容を先に言われたのだから、当然だ。
「菜緒歌が亡くなって狂ってしまった鈴野くんを一旦逃すために生み出された……それが、あなた。そうでしょ」
俺は動揺し、震え声で「……分かってたのか?」と尋ねた。
「分かるよ……。だって、性格も口調も、元の鈴野くんとは全然違うんだもん……」
振り返った彼女は……涙を浮かべていた。強がって口角を上げた反動で、全ての雫が頬を滑っていく。
「英輝はそれ隠してたし、指摘なんてできなかった。指摘のせいで、狂った鈴野くんに戻るのも怖かったし」
「……そうか。医師は騙せたのに」
「それはラッキー……というか、先生が普通の鈴野くんを知らなかったから、かな。酷く精神が病んでる鈴野くんしか見てないから、今の英輝は回復状態にしか見えなかったと思う」
なるほど、と俺は無声で口だけを動かした。
そう、俺は……鈴野英輝という人物を死なせないために生み出された、もう一つの人格だ。
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