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「午後は人と会う約束があるので。午前中だけで済むなら、行きます」
「やった!」
竜也は喜び、朋とお喋りでもしようと身を乗り出したが、彼は相変わらずスマホに夢中だ。
「いつも、何やってるの? ゲーム?」
「電子書籍、読んでます」
「へえ……」
意外だった。
竜也はてっきり、朋も若い子にありがちな、ゲームや動画を楽しんでいると思っていたのだ。
「どんな本? マンガ?」
「竜也さん、知らないと思います」
「言ってみてよ。もしかすると、知ってるかも」
「今読んでいるのは、萩 雀斗の『海の次郎鯨』です」
あ、もしかして。
竜也は、思い当たった。
確か、その作家の短編が、小学生の頃、国語の教科書に掲載されていたのでは?
「ひょっとして。『菊枝ばあさんと鶴』を書いた人?」
その竜也の言葉に、朋は顔を上げた。
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