小説の国

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小説の国

私は暗い暗い所へ落ちていった。しばらく落ちると宙に浮いていた私の足が何かに着いた。どうやら地面に着いたようで、私は辺りを見回した。するとそこはーー何もかもが、小説によって作られた世界だった。道行く人にここは何処なのか聞いてみると、その全員がこう答えた。 「ここは、『小説の国』。全ての事実が小説上のことでしかないワンダーランド。この世界をごゆるりと堪能くださいませ、『選ばれた』お嬢さん。」 どうしてこうなったのかということを簡単に説明すると、私は元の世界での生活に飽き飽きしていた。私の一族はとても裕福な一族で、不便なことは何もなかった。金で手に入らないものは無かったし、超高級品を衝動買い出来る程財力があったからだ。だからこそ、毎日が退屈だった。そんな時、私の執事を務めている『ディアレッタ・フェリスタス』が御出掛けを薦めてきた。その時連れてこられたのは大樹があるただの近くの公園だった。ディアレッタは忘れ物をした、と言って屋敷に取りに帰った。その間に私は大樹に話し掛けられたのだ。初めは違う人に言っているのかと思って無視をしていたけれど、周りを見渡すと私以外人がいなくて、私に言っていたのだと自覚すると怒った大樹は私を穴に落としたのだ。 その穴の底に着くと、そこには『小説の国』が広がっていた、というわけだ。 アロリス「はぁ…ディアレッタ、あの大樹の事を知っていましたね?」 何も知らないこの国のことについて調べるため、私は図書館だと思われる場所に出向くことにした。その図書館に入って私は驚いた。その図書館には私が着けているものと似ている黒いリボンを着けた女の子が椅子に腰掛けていたからだ。 ???「いらっしゃい、よく来たわね。『第6のアリス』。」 アロリス「『第6のアリス』…?私はアロリス・リストニエスタ・スターシェンですが。」 ???「ええ。頭文字を取ったら『ARIS』になるじゃない。だからあなたが『第6のアリス』よ。」 このことを教えてくれたのは『第1のアリス』だった。前髪が目にかかる位長くて、片目しか見えない。そして第1のアリスは色々なことを教えてくれた。どうやら、この国では迷い混んできた人のことを『アリス』と呼んでいるそうだ。そして、その『アリス』が来たのが私で6人目。『アリス』は名前の頭文字を取ると『ARIS』と読めるからそう呼ばれているらしい。だから私はあの大樹を怒らせたからここに来てしまったというわけではないようだった。 第1のアリス「今、お茶を用意しますね。」 アロリス「…ありがとう。でも、遠慮しておきます。」 第1のアリス「どうして?何か理由がありまして?」 アロリス「……私、家が裕福なこともあって、毎日が退屈だったんです。茶なんて何杯も飲みましたし、もう十分なんです。」 そう言うと第1のアリスはにっこりと笑って安心してください、と言った。楽しそうにお茶の準備をする第1のアリスの後ろ姿を見てなんだか微笑ましくなった。出来上がったのか、第1のアリスがカップを持ってくる。中を覗き込んでみるとホットチョコのようなものが入っていた。ホットチョコも同じだ、と思って飲んでみると、信じられないことが起こった。なんだか飲んだことがない味がした。 アロリス「これは……?!」 第1のアリス「ふふっ。不思議でしょう?この世界のお茶は飲む人が『飲みたい』と思った飲み物に変わってくれるのです。これなら、あなたでも飲んだこと無いでしょう?」 アロリス「…ありがとうございます。」 お茶をもらいながら私はこの国について教えてもらった。まず、この国のこと。この国は『小説の国』と呼ばれていて、迷い混んだアリスが一番初めにやってくる到着地点となっているらしい。この国は小説がとても身近にあって、シエスタにはみんな小説を読むそうだ。この国の小説を書いているのは『白の女王』という人なのだが、最近急に小説を書かなくなってしまったのだという。 第1のアリス「だから、この国は早く何か策を立てないと崩壊する。そんな時に、第6のアリスの予言が来たんです。」 アロリス「私が来ることを予言した人がいるんですね?」 第1のアリス「はい。流石第6のアリス、鋭いですね。でも予言する人は分からないんです。いつも匿名で予言されてますから。」 その予言する人が予言するから私が住んでいた世界からアリスとして迷い混む人をということか。 アロリス「そういうことなら、私が選ばれたのは何か理由がある、ということですか?」 第1のアリス「はい。おそらく、この国を守ってくれだとか、そんなことでしょうけど。」 でも、それなら私を新しく『アリス』としてここに来させるより、第1のアリスに頼めば良いのでは、と思い、それを言ってみると第1のアリスは真剣な表情になって話し始めた。 第1のアリス「それは出来ません。何故なら…私は、失ったからです。」 アロリス「……何をですか?」 第1のアリス「私の『頭脳』を、です。」 アロリス「え……?」
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