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「はいはい、真白はここに立ってて」
頭が真っ白になってる間に1組の教室に佇んでいて、葵くんが停車させた目前には男子が勢揃い。
葵くんは五分刈りの男子の肩に手を回して、私に観察対象を見せる。
「真白、コイツの身長当ててみて」
「…168、7か8」
思わず呆然とした頭は素直に従ってしまった。すると、葵くんは嬉しそうに顔を砕けさせてはしゃぎ出す。
「ほうら170ねーじゃん!嘘つけ〜」
「何で見ただけでわかんだよ!」
「真白の目はスケールなの!選ばれし者なんだよ。美術家の眼力舐めんな」
ドキン!と体が波打って頭が冴えた。
葵くんこそ、鋭い感覚の持主でしょう?
だって誰も気付いたこと無かった、観察する癖が目算の力をつけたこと。
皆から隠した両手が後ろで組み合ってモゾモゾと戸惑っている。
幼稚な輪の中から「白眼だ!白眼!」と男子が囃し立てる声。「真白、俺は俺は!?」純平が飛び出し気をつけのポーズをとった。
「…175、超えてる」
「伸びてる!?やったぁ~」
「じゃあコイツの腹回りは?」
柔道部の体格のいい男子のお腹を葵くんはポンポンして聞く。
「…98センチ?」
「ぶっは、メタボじゃん!もう赤コーラ禁止な」
一層騒がしくジュース奢れだの何だの……賭けのジャッジに利用された私。
「真白も行く?」と葵くんに誘われたがブンブンと横に首を振った。疲労感にどっと覆われてトボトボと2組に帰る。
はぁ〜。私の平穏で平凡な高校生活…
何処に行ったの?
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