3.しろのクオリア

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「はいはい、真白(ましろ)はここに立ってて」  頭が真っ白になってる間に1組の教室に佇んでいて、(あおい)くんが停車させた目前には男子が勢揃い。  葵くんは五分刈りの男子の肩に手を回して、私に観察対象を見せる。 「真白、コイツの身長当ててみて」 「…168(てん)7か8」  思わず呆然とした頭は素直に従ってしまった。すると、葵くんは嬉しそうに顔を砕けさせてはしゃぎ出す。 「ほうら170ねーじゃん!嘘つけ〜」 「何で見ただけでわかんだよ!」 「真白の目はスケールなの!選ばれし者なんだよ。美術家の眼力(がんりき)舐めんな」  ドキン!と体が波打って頭が冴えた。  葵くんこそ、鋭い感覚の持主でしょう?  だって誰も気付いたこと無かった、観察する癖が目算の力をつけたこと。  皆から隠した両手が後ろで組み合ってモゾモゾと戸惑っている。  幼稚な輪の中から「白眼(びゃくがん)だ!白眼!」と男子が囃し立てる声。「真白、俺は俺は!?」純平が飛び出し気をつけのポーズをとった。 「…175、超えてる」 「伸びてる!?やったぁ~」 「じゃあコイツの腹回りは?」  柔道部の体格のいい男子のお腹を葵くんはポンポンして聞く。 「…98センチ?」 「ぶっは、メタボじゃん!もう赤コーラ禁止な」  一層騒がしくジュース奢れだの何だの……賭けのジャッジに利用された私。  「真白も行く?」と葵くんに誘われたがブンブンと横に首を振った。疲労感にどっと覆われてトボトボと2組に帰る。    はぁ〜。私の平穏で平凡な高校生活…  何処に行ったの?
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