1.始まりは夢色

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「あのさぁ、  夢中になると周り見えなくなるタイプ?」 「へ?」  彼が少し顔を上げると、またグルンと澄んだ青色の瞳がすぐそこにあった。 「っ…!」  勢いよく体をのけ反ると揺れた私の毛先が彼の頬をかすめる。くすぐったそうに両目を閉じて、蒼白だった彼の頬が桜色に染まった。  ドクン。  私の体は大きく波打って足がもたつき……  後ろによろける――――!?  目の前から伸びてきた手に手首を掴まれ引っ張られる。反動を利用した彼の力に誘導されて、ソファにお尻からストンと落ちて少しポヨンと弾む。  同時に私の中に星屑が落っこちてきてキランと跳ねた感じがした。  ……なんだか急に恥ずかしい!  それにドキドキして落ち着かない!  なのに隣に座る彼は、平然とポケットからスマホを取り出して触りながら喋り出す。 「いいとこ独り占めしてんね。  イイでしょ?このソファ?隣の物置から引きずってきたの。あーやべ、寝すぎたなぁ。  これから部活?絵描くの?」  私の方を見るのでコクンと返事した。 「描いた絵が全部入賞するんだって?独学で凄いよね」  スマホを離すと背もたれに肘をつき片膝を座面に乗せてこちらを向いた。  さっきから私を知ってる風に話すけれど、私は彼をちっとも知らない。上履きの色からして同学年らしいが理系の1組か大学志望のA組?今更顔と名前が一致しない同級生とか珍しい。   段々私の首は傾き眉間が狭まると察した彼が回答をくれた。 「純平(じゅんぺい)に聞いたんだよ。  部活紹介で出たろ?ぼっちの部活ってウケてたら、純平が名字同じで近所って」  純平は幼馴染でお調子者だからベラベラ話したんだろうと推測した。ずっと同中は皆一緒のクラスだったけど、純平だけ3年時に受験科目の都合で理系に移ったのだ。  ついでにこの彼も理系1組の在席だと回答に含まれていた。
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