16.しろとあおの未来(2/2)

4/5
前へ
/77ページ
次へ
真白(ましろ)?」 「お父さん… あ、うっ…」 「話は聞いているよ。迷っているのかい?」 「…ひとりで決めていいのか、迷ってる」 「もし、その原因が父さんなら…謝っておかないとなぁ」 「っ、何で!?」 「父さんが入院した時、まだ真白は小さかったのに…  怪我と向き合うのに精一杯で、真白に随分と怖い思いをさせてしまったよ。  じいっと探るように人を見るようになって、自分の気持ちを後回しさせていたんだな」 「それはっ、お父さんのせいじゃな…」 「真白にたくさん花の絵を貰って、力も元気もくれたのに…足を元に戻せなくて、ずっと不安にさせてしまっているだろう?」 「ち、がっ…」  ――――違う、と言い切れない。  ――――もう、嘘は… つけない。 「父さんの片足は無惨かもしれないが、知らなかったか?  父さんは幸せなんだ、家族が笑顔でいてくれて。真白が笑えば、花の絵をくれた時と同じで元気を貰えるんだよ。  彼がいるおかげで、真白はよく笑うようになっただろう?」 「…本当に?」 「あぁ。だから真白が幸せなら、父さんも幸せだ。  自分の選んだ道を、大切な相手と一緒に進めばいい。そうやって、父さんには母さんがいるじゃないか。  母さんとは一心同体だから、何も心配することはないぞ。イテッ」  バチンと音がした後に、鼻をすすりながら照れ笑いする母の声が聞こえた。  一心… 心をひとつに。  いつも二人が同色のオーラを出していたのは、心と心が繋がっていたからなんだね。  家族を思い浮かべていた私の視界に、ようやく葵くんを映し安堵の笑みを送ると…  これもお見通しだったのか、葵くんはふっと笑う。 「それにしても…」 「うん?」 「彼の熱心さには参るよ。  アメリカの先進医療がどうだとか、イギリスの再生医療があーだのこーだの。  さっぱりわからん長いメールを送ってきて」 「え?」 「足の事はとっくに諦めてたが、医学の進歩に…未来へ希望や夢を見れるようになったよ。まったく面白い奴だ」 「え??」 「彼はそこにいるのかい?代わってくれないか?」 「う、うん。……、お父さんが代わってって ?」  私は葵くんにスマホを差し出すと、コホンッと咳払いをして受け取った。 「はい、神崎(かんざき)です。ご無沙汰しています」  なぜか私が緊張してしまって、胸で祈るように左手が右手を包んでいた。  
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加