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「……え?
ご無沙汰でもないし、しつこい?…はぃ…まだ他の論文も……もういいって!?
興味深い発表なのに…」
・・・? 戯れてる?
「はい、先日お伝えした通りに手続きを始めます」
「…なっ!?」
話は聞いているよ、父が言っていたのはそういうこと!?
「はい、わかりました。…失礼します」
何くわぬ顔でスマホを私に返し「はぁ〜」と腰を折り曲げると、葵くんは謎のガッツポーズを夜空に掲げた。
デッキをうろついてダッフルコートをひらひら、足元から灯る星のライトを写しながら蝶のように舞わせてる。
満足したのか振り返ると、そのまま私に向けて両手を広げた。
おいで、を勝ち誇った顔で。
私はすくっと立ち上がって… 一歩、二歩、止まれ。
「・・・言って!!?謀ったでしょ!?」
「ぷはっ。怒った」
「ひどい!私にだけ黙ってた!」
「プロポーズするのに本人にバラせないでしょ?」
「今日のために盛大に嘘ついちゃったのよ!?お母さんも全部知ってて…だからニタニタと。恥ずかしすぎるっ」
思い返す、自分のしどろもどろな大根演技。初めから葵くんとお泊りするってバレてたんだ。
「真白、下手にアリバイ工作すると、俺達ろくなことにならない。同じミスは二度も繰り返しちゃいけないんだよ?」
「はぁ〜…」今度は私がうなだれてしまった。
そうだったね…
葵くんは、先回りが得意なんだった… !!
いつの間にか目の前にいた葵くんが、私の右手を口元に寄せて指輪に口づけを。
そして、ぎゅっと抱きしめた。ぎゅうっと隙間ないくらい、きつく抱き寄せる。
「もう二度と離さないよ」
―――――!!?
体温まで伝わるような… 初めてのキス。
大好き、よりもっと…
濃厚で深く色添う気持ちがひたひたに沁みこむ。
私も同じ気持ちのお返しをして…
星屑のステージで、
永遠の愛を誓う。
長く、そして… 熱く重なる唇は―――――ふたりの心までも溶かすみたいに。
キラキラ光る星達が、瑠璃色の空から降ってくる。
ひとりで怯えた過去も優しく包んで、諦めかけた夢色の未来を輝かせて…
真白と葵のクオリアは―――――
今、ひとつに結ばれる。
「…伝わった?」
「うん」
いつの日も、心と心を繋ぎ合わせて…
ふたりで未来を歩んでゆく――――。
『しろとあおのクオリア』完
あなたの未来も
希望の光で満ちていますように。作者より
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