2.青色のいたずら(1/2)

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 今日も急な登場をしては勝手に動き回り「昨日ここに落し物……あったあった」ソファの下を覗き紙を手にして我が物顔の(あおい)ひと。髪色は確かに瑠璃の美しさを失っている。    キャンバス越しに目が合うとまた私を視界の中にきっちり納める。それをされると緊張するのに、側まできて彼はまじまじと絵を眺めた。  腕組みをした葵ひとは視線を絵から私に向けると瞳を上下に動かして…… 「なんかそれ…、可愛いな。園児みたいで」 「かっ!?」  長袖のスモックエプロンが園服に見えるのだろう。中学からの愛用品で絵を描く時は制服を汚さない為に着用している。元は水色だけれど色褪せてしまったし絵の具は付いてるし、可愛いと言われる容姿ではないのに。  唐突な発言で私を困らせるとさらに腰を折り曲げて顔を覗き込むので、背筋がキュッとなって息が止まりかける。 「てか前髪長くてよく見えんね?」 「なっ!?」  私の前髪をサラッと横に流し自分の目線と強引に合わす。その瞳の虹彩は昨日と違い、本物の濃褐色で瞳孔に焦点がぶつかれば……金縛りみたいに身動きできない。 「あれ?毛先に絵の具ついてるよ」 「えっ!?」 「これ落ちんの?」  さっき驚いた時に髪がキャンバスに触れたのだろうか。つぅーっと私の横髪をなぞって絵の具を自分の指先に拭き取ってくれる。私はロボット的な動作でササッと濡れ布で消し取った。  「ありがと」と言われて言葉もなくコクコクと頷いて見せるが……スッと大きな手が顔に迫ってきて!? 「髪も結んだらいいんじゃないの?こうやって…」  ―――――雷が、、、頭に落ちたかと思った。ビリビリ全身が痺れて……  私、爆発しそう!  葵ひとは私の背後に回ると両手で頬の横から髪を掻き集めて押さえている。 「ほら、結べるじゃん。絵の具もつかないでしょ?」 「―――――っ!」  もう限界っ。頭の中パニック!    コクン、コクン、コクン・・・・・  壊れたおもちゃみたいに首を小刻みに縦振り。ゆるりと解かれた髪が耳をくすぐると、自分が破裂しそうな衝動を必死に耐える。  ん〜っ、心臓が痛い。  体をふるふる揺らす私を面白がって笑い声をばら撒くと「じゃあな、まひろ」葵ひとは去っていった。  どうやったら、この電流消えてくれるの?
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