お祝い

1/1
前へ
/14ページ
次へ

お祝い

「先生! 受賞おめでとうございます! 先生が……」 「先生! 僕は授賞式には行けませんが……」 「先生! きっと今年は先生の……」  パーティーから帰ると、たくさんのお祝いメッセージが届いていた。ご丁寧にも皆動画だ。世界各地に散った教え子たちが、彼らの世界を背景に笑っている。  その顔を見ていると、じんわりと幸せな気分になった。 「ふふっ」  最後のメールまで確認すると、自然と小さな笑いが漏れる。だが、その幸せは一瞬で、私はどこかから聞こえてきた砲弾の音に身をすくませた。  その戦場の音と同時に、幸せな気分も消えた。もう一度メールを見ても、そこにあった幸せはどこかに消えていた。何もない、どんな感情も浮かび上がってこない。  私の中には泥棒が住んでいて、私の中に生まれた全てをその泥棒が奪っていく。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加