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小さい頃からわたしは常夜灯でも眠れない。なのに、数日前から毎晩常夜灯を点け、アイマスクをして眠ってる。いや、眠ろうと努力している。
仄かなオレンジ色の電球の明かりで部屋は薄暗い。そのクローゼットの隅にグレーの塊が見えた。
ザーッと全身に鳥肌が立つ。
ぼんやりと見える塊も、明かりを消し暗闇にすると足を抱えて座っている洋司の姿がはっきりと浮かんだ。
初めて彼を目にした夜、あまりに驚いてわたしは悲鳴とともに尻もちを付いた。そして洋司が死んだと直感した。
のに・・・。
慌てて掛けた電話に「もしもし・・」と、出てきた洋司に驚いてスマホを落としてしまった。
ー まさか生霊? ー
それから数回、塊を前に洋司に引き取りの電話を入れたけれど、結果数分前の捨て台詞で切られるだけだった。
目の前の塊は確かに洋司で、話すわけでも動くわけでもないけれど、暗さが増すほど鮮明になる。
この塊は浮気をした洋司の後ろめたさが形となって出てきたものなのか、無意識にわたしが自分で創り出したものなのか。
どちらにしても、こんなお荷物。
一体どうやって処分したらいいんだか・・・。
そう思うと、今夜もまた朝まで眠れそうにない。
(了)
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