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ペダルが鳴る。ギアは軽いが、肺は重い。ぎこちなく左右するハンドルを包む少しかじかんだ手。
吸い込む空気に秋の金木犀がよく香る。優しく心地よく疲れを労ってくれるようだ。空は高く、大地は茜に肥えていく。
滑らないように気をつけながら道を染める落葉へ目をやる。あの裏では多くの虫たちが強く生きていることだろう。
一年もあと少しで終わる。よくやりきった。
穏やかに澄ましていたが怒りは止められない。だけど不意に切なくなって、きっと芯から凍えてしまう。
壁とは言わずとも急勾配を乗り越えた。紆余曲折、遠回りもしたが、その分だけ多くの景色に心を動かされた。
幾度も巡るこの先にもし立ち塞がる障害が現れたらどうなるだろう。その頃には今度こそ疲れ切ってどうすることも出来ないかもしれない。
時間は何度も繰り返す。有限に思えて意外と無限だ。やるべきことを小分けにして後回しにしたって構わない。
車輪は変わらず一回転を繰り返して進んでいく。倒れないようにこの身で食らいつく。気付いているかは分からないが、支え合ってそれとなく。
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