アリサ

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この住宅街で泥棒の被害が頻発しているっていうのは、週に一度来てくれる家政婦の恵子(けいこ)さんが教えてくれていた。 恵子さんは食材や生活用品を用意してくれたり部屋のお掃除なんかもしてくれる。 週に一度にしているのは私が自立しなければと思って、心配する恵子さんを断っているからだ。 一人で頑張ろうと思っていても、昼間の来客に対応するのは怖くて居留守を使ってしまうことが多い。 もし、世間を騒がせている泥棒さんがこの家に入ってきて私に気付いたら、暴力を振るわれてしまう危険があった。 下手したら殺されてしまうかもしれない。 居ない振りをしてやり過ごせればいいのかもしれないけど、家の中を荒らされたりお父様の大事なコレクションを盗られたりしたくはない。 そこで思いついたのが惣二郎さん作戦だ。 泥棒さんも人を傷つけたりしたくはないだろうし、捕まるのも嫌だと思う。 だったら、お互いに無かったことにできれば、双方にとって好都合ではないですか。 今のところ、毎回惣二郎さんを装ってくれる泥棒さんばかりで、話し相手になってくれるから楽しいの。 嘘つきは泥棒の始まり、なんて言うけれど。 惣二郎さんがいるものとして嘘を吐いている私の方が、泥棒さんに向いているのかもしれない。 なんてね。 了
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