泥棒は嘘つきの始まり

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「あ、あぁ。ちゃんと覚えているよ。アリサちゃん」 ふぅーん、と納得したのかしないのか、アリサちゃんは言う。 「惣二郎さんって、しばらく日本にいなかったみたいだけど、どこに行ってたの?」 は? 知らねえよ!って言いたいところだが、バレて通報されても困る。 「ちょ、ちょっとね……。仕事の関係でね」 早く帰りてえ。 「ねぇ、惣二郎さんが今まで何してたか聞きたいなぁ」 え。何言ってんだ、この小娘。 「い、いやぁ。今日はもう遅いからまた今度ね」 「大丈夫よ、もう子供じゃないんだから。ねっ」 しつけえな。 ねっ、じゃねえよ。 いい加減にしろよ。 「そ、そうだな。イギリスに行ってて……。そう、アンティーク家具の買い付けをしてたんだよ」 「へぇ、イギリスかー。いいなぁ、アリサも行ってみたいなぁ」 なんて会話を小一時間。 嘘で塗り固めた俺のソウジロウさんは疑われることなく、この豪邸からの脱出に成功した。
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