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一昔前には、この土地に家を構えることを誰もが憧れていた高級住宅街の中、俺は一軒の豪邸を見上げている。
ついさっきまで、屋根の傷み具合や外壁塗装の剥がれ具合をチェックしていた。
玄関扉やサッシが一昔前のタイプだったのも確認済だ。
庭に古びた犬小屋があったが、その荒れ具合から現在犬は住んでいないようだ。
もう一度、玄関チャイムを押してみる。
室内に人の動く気配はない。
リフォーム案内のチラシを入れる際にポストの中を覗くと、他の業者のチラシが無理やり押し込まれていた。
しばらくポストが開けられていないということだ。
旅行にでも行っているのだろうか。
今夜、もう一度来てみよう。
俺はアタッシュケースを掴むと次の家に向かった。
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