第1話、最初の約束

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第1話、最初の約束

これは、僕らが最初に交わした約束。  九年前の、何気ない日の特別な約束だった。  僕が五歳になって間もない頃。  いつも通りに水乃ちゃんの背中に付いて行って、水乃ちゃんと遊んでいた頃。 『ねぇみずのちゃん  ぼくこのあいだ、すごくゆうひがキレイなうみが、テレビにでてたのをみたんだぁ』  僕らはよく砂場で遊んでいて、水乃ちゃんは僕の隣でバケツで型どった綺麗な砂の城を作ってたっけなぁ。  僕はそこに少しずつ指や木の枝で窓を作ってたのをよく覚えている。 『ゆうひ?  けしきより、わたしはうみであそびたいな!』  水乃ちゃんはそう言ってぴたり、と手を止めると意志の強い瞳で僕を見つめた。 『えー、うみがゆうひでまっかになってすごくキレイなのに』  あの時の事はあまりに朧気で今じゃ、よく覚えてない。  でも、僕は水乃ちゃんと何処かに行きたかった。  それだけは、今も覚えてる。  だから、テレビで見掛けた綺麗な海に一緒に行きたかったんだ。 『だってわたしキレイなけしきのうみ、みたことないし  おかあさんだっていそがしいって、あそびにもつれてってくれないし……』  水乃ちゃんと意見が別れたのは少しだけ残念だったけど、僕は代わりに提案した。 『そっかぁ  あ、じゃあさ!  みずのちゃん!』 『ん?どしたの、なぎ』 『ぼくらがおっきくなったら、いっしょにうみにいこう!』 『え?』  僕は水乃ちゃんとずっと一緒に居たかった事もあって必死だった。  名案だと思うと凄く嬉しくて、水乃ちゃんに笑いかけた。  この時の、呆然とした水乃ちゃんの表情を僕は今も覚えている。 『あ……  だめ、かな』 『ふんっ!』 『みずのちゃ――『いいわよ』 『へ?』 『おっきくなったら、ふたりでいっしょにキレイなうみをみにいくわよ!』 『うん!』  水乃ちゃんに断られたらどうしよう。  嫌われたらどうしよう。  なんて、不安に思った瞬間、水乃ちゃんに言われた「いいわよ」という言葉は不安から僕を掬い上げてくれた。  僕はその瞬間がとても嬉しくて、幸せで。  いつまでも、このまま水乃ちゃんと一緒に居られるんだと思っていた。
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