③喰らう歌

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「あ〜んっ、曼〜!もう何だか分からん手伝いさせられる前に2人で遠くに逃げようやぁ〜!」 「何処に行くんだい、アオイ?」 気配なく突然3人の前に現れた白檀を見て ニャアァァーッ!! とアオイと羽沢は慌てて曼の後ろに隠れた。 「おおおお疲れ様ですっ白檀様ぁっ!このたびはお招きいただき誠にありがとうございますっ!しっ、しかし白檀様、貴方がこちらに現れてしまったら会場が大変な騒ぎになるのでは…!?」 「大丈夫だよ、奏。錯乱効果の術をかけた眼鏡をかけているからね、お客さん達は僕が辻野永遠だと言う事は眼鏡を取らない限り気付かないよ」 「白檀様、今日はまたどうして俺達をこちらに呼んだのですか?」 「うん、その事なんだけどね曼、僕のファンでライブを開くたびに必ず来てくれるお嬢さんが1人居るんだけど、その子……何だか憑いてるみたいなんだよね。僕が祓ってあげても構わないんだけどライブを中断して駆け寄るわけにもいかないし、そんな事わざわざしてあげるほど僕も親切じゃないから……。それにほらこう言うのって面倒くさいじゃない?」 にこぉ…っと静かに笑みを浮かべた白檀を見て曼は困ってこめかみを指で掻いた。 「つ、つまり、僕ぅらにその嬢ちゃんを何とかしなはれって事ですかぁ?」 「そう」白檀は頷き返した。 「そう言う子が1人でも居ると他のお客さん達にも悪影響が出るからね、現についこの間その子の近くに居た女の子が突然体調を崩して倒れちゃったもんだから救急搬送されちゃってねぇ…。ライブを途中で中断せざるを得なくなってしまって非常に苛立った…じゃなくて残念な事になっちゃって…。またそう言う事が起こったら大変でしょう?…ほら僕“真面目”だから最初に初めた事はきちんと最後まで完璧にやり通したいんだよ。気持ち分かる?当然分かるよね?」 「「はい、分かります!」」アオイと羽沢は強く頷き返したが曼は嫌な事を押し付けられた事にガッカリしてため息ついていた。 「これっ、曼!」とアオイは焦って失礼な曼の背中をバシッと叩いた。 「構わないよ、アオイ。とにかくお前達、ライブが終わるまでの間に会場の中でその子を見つけて何とかしなさい。では僕は衣装に着替えるからこれで失礼するよ。あぁ、仕事が終わっても勝手に帰らないようにね。間違えて帰ったりしたらただじゃおかないから…。じゃあそう言う事で…See you later」 「See you laterで〜す」羽沢が手を振り返す横で「横暴…」とアオイは苦い顔をして、それから白檀が離れて行ったのを見て安堵した。
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