①物騒クリスマス

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①物騒クリスマス

     ❉┅❁⃝┅❉·*˚̩̥̩͙*· ̥̩͙̩̥·*˚̩̥̩͙*· ̥̩͙̩̥·*˚̩̥̩͙*·       ①物騒クリスマス      ❉┅❁⃝┅❉·*˚̩̥̩͙*· ̥̩͙̩̥·*˚̩̥̩͙*· ̥̩͙̩̥·*˚̩̥̩͙*· 1.     「…ス……ス…」すぐ背後に居る男が静かな声で呟いた。男は3人組の若い奴らでその中心に居た男がクスッと笑うと「意味分かる?」と隣に並んでいた友人に聞いた。 友人達は小声で「分かる分かる」とクスクス笑いながら頷くと「…“ス”ね。確かに“ス”だよね。やっばぁ〜……」と笑った。 3人と同い年くらいの若い女、3人の前、人気のパン屋の列に並んでいた船橋椿(ふなばしつばき)は後ろでニヤニヤしている男達になんだか気持ち悪さを感じてちょっと嫌な顔をした。それに気付いた母親の敦子(あつこ)が「あら、具合悪いの?」と聞いてきた。 椿は首を横に振って「大丈夫、何でもないよ」と笑った。 「…ス……ス…」後ろの3人がまだクスクス笑っている。いったい何なの?椿は気味が悪くて仕方なかった。 “ス”って何なの?まさか私に言ってる? 椿は他の景色を見るフリをしてちらっと後ろの3人を見てまたすぐ「今日寒いね」と隣の敦子に話しかけた。敦子は「そうねぇ、もう冬だもんね」と頷いている。 でも後ろの人達知らない人だし…3人にしか分からない暗号でも言って笑ってるだけだよね? 心の中ではそう思っていても椿は小さい頃から自分に関係ないちょっとした事でも“もしかしたら自分のせいなんじゃ…”などと何かにつけて“自分が悪かったのでは?”と過剰に反応しては心配してしまう性格だった。だから今だって“もしかしたら私の事で笑ってるんじゃ?”と真っ黒なぐるぐるとした不安が心の中をゆっくり侵し始めて来ていた。 どうしよう…私の事で笑ってる……今日の服変だったのかな?…髪型おかしかったのかな?どうしよう…どうしようっ!? 椿は息するのが苦しくなって来た。 「パン売り切れなければ良いわねぇ…。あっ、帰りにお父さんのお酒買って帰らなきゃ……お砂糖…はまだあったかしら?」 敦子の声などもう椿に聞こえていない。ただただ後ろの3人が怖くて今すぐにでも走って家に帰りたくてしょうがなかった。
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