③喰らう歌

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「探すのは良いですがこうも人が沢山いらっしゃると簡単には見つけられそうにないですね」 「あ~りゃりゃ、こりゃりゃ。…ちゅうか白檀様、その問題の嬢ちゃんの顔知っとるんやから教えてくれたら良えのに本当(ほんま)めんどくさがり屋な方やから困ったもんやわぁ」 「えぇ本当ですね。まるでアオイ様がもう1人いらっしゃるみたいで困ったものです」 「何やとっ!?」 「あっ、お客様達がコンサートホールに向かってぞろぞろ歩き出しましたよ!そろそろライブが始まるのかもしれませんね」 アオイは チッ と舌打ちした。 「馬鹿みたいに広い場所で馬鹿みたいに歩いて探すより中に入って探す方が手っ取り早いかもしれへんな。…ったく、なぁんで僕ぅがこないな事せなあかんねんっ!?」 曼は黙って1人でコンサートホールに向かって歩いてった。それに気付いたアオイが「あっこれ、曼!待たんかいっ!」と羽沢と一緒に追いかけてった。            「お〜、凄い広さ…!日本で1番大きなコンサートホールだけありますね!」と驚いて言ったのは羽沢だった。 「広さなんてどうでも良えわ。それよりさっさと問題の嬢ちゃん見つけんと…」 曼と腕を組んで歩いていたアオイは曼をちらっと見上げた。「曼がそろそろマジで吐いてまうわぃ」 あまりの人の多さに酔って、曼は う"え"… と真っ青な顔をしていた。 ー あーあー!辻野君が私だけのために歌ってくれたら最高なのになぁ!…わっ、この女ぶつかって来たくせに謝んないなんて何様!? ー もうっ!隣の女何なの!?皆の辻野君なのに、彼女ヅラして胸元で写真抱きしめちゃって!きぃ〜っ!!ムカつく〜!!しかもめっちゃ巨乳だし顔可愛いし!全部腹立つ〜!! ー あっ!この人が持ってる辻野君のポストカードってライブ当日に先着100人しか貰えない限定のやつじゃない!!この人ゲットしたんだ…う、羨まし〜悔しい〜っ!! 聴きたくなくてもあちこちから自然と聴こえてくる女達の心の声を聴かされ曼はまだ何もしてないのにもう既に疲労困憊状態だった。 白檀様も無茶苦茶言いやがって…。 曼は「は〜…」と深い深いため息をこぼした。
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