56人が本棚に入れています
本棚に追加
ーこれ白檀。あまりワシの僕達を虐めるでない。
突然助手席に現れた死神に隣で運転していた羽沢は驚いて 赤信号になっているのにアクセルとブレーキを慌てて踏み間違えるところだった。
「これはこれはお爺様、本日はお日柄もよく日々健やかにお過ごしの事と存じます」
ー ふんっ…何じゃい、その余所余所しい態度は?
「お会いするのは久方ぶりでしたので。……仕事の方はもう済んだの?」
ー お前さん…今さっき人間を喰っただろう?
「話し、僕の質問の答えになってないよ?」
ー お前から血の匂いがするわい。
「……」人の話しを聞いちゃいない…。白檀は諦めたようにため息つくと「歌い過ぎたから喉が渇いてね」
ー腹が減ったならワシに言えば良いだろう。死体なら山ほどあるぞ?
「僕は美しい死体しか口にしないって決めてるんだ」
ー子生意気な…。まぁよくここまで父親そっくりな息子になったもんじゃわい。お前さんを見ていると若い頃の槐を思い出すよ…。槐はワシの息子なのに見た目も中身も全て妻にそっくりになってしまった。
あぁ、だから白檀様は死神に顔が似てないのか…。 側で2人の会話を黙って聞いていた曼達は揃ってそう思った。
「……ところでお爺様、今日は何の用で来たの?まさかただ茶飲み話をしに来ただけじゃないでしょ?」
ー お前さんには用はない。ワシが用があるのは曼、アオイ、お前さん達にじゃ。…奏は別に居ても居なくても良いがな。
「ええっそんなぁっ!?」羽沢は悲し気な声をあげた。
ーと言う冗談はおいといて…。
「今の冗談なの?」
ー 近々お前さん達のところに用事を持って来る人間が現れると思うのじゃが…。
「近々所が毎日のように持って来られて参っとるんやけど?」
「まぁ聞け、アオイ」死神はニヒルな笑みを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!