③喰らう歌

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3.      辻野永遠クリスマスライブの会場はライブが始まるまでまだ2時間以上時間があると言うのに女性客だらけで混雑していた。 物販ブースなんていつになったら買えるか分からないほど凄まじい行列になっている。この様子から見て白檀…いや、辻野永遠と言うアイドルがどれだけ大人気なのか今日初めて辻野永遠を知った人にも嫌と言うほど分からせられる事だろう。この御三方がそうだ。 「さすが白檀様やわ…」 「えぇ、ライブ会場に車を停めるのだけで随分時間を取られて大変でしたね…」 「……気持ち悪い…」曼はもう既に人酔いしかけていた。 一応会場のスタッフと言うので来ているため3人の首には昨日渡されたお揃いのスタッフパスがぶら下がっていた。もちろん服装も白檀(副社長)に言われた通りちゃんとスーツを着ている。 「何だかいつも着物しか着ないお2人が洋服を着ているのが不自然な感じがして気持ち悪いですね」 「しぇずね!あんた失礼やな!そないな事あんたから言われんでも僕ぅらが1番分かっとんねん!何でこないなもん絞めなあんねんって、クソッ!」 窮屈そうにネクタイを引っ張るアオイを見て「あーあー、何してんですか!引っ張るとますます苦しくなりますよっ!」と羽沢は慌ててアオイのネクタイを結び直してやった。
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