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帰宅すると、「おかえりなさい」「おかえり、パパ!」とただいまを言う前から声がした。電灯を点ける前から明かりのある自宅。「ご飯にします? それともお風呂?」と定番なことを聞いてくるミサキ。「それじゃ、風呂で」と言うと、浴槽にお湯が張られていた。入浴剤も良いのを使ってるようで心地よい。髪や身体を洗い、そして湯船に浸かる。全身に温かな心地よさが染み渡っていく。おっさんくさく、「あぁぁぁ……」と声を上げてしまった。
風呂から出ると、また三人分の夕食。今度はビールまで用意してくれていた。
「いただきます」と三人で言う。「あなた」とビール瓶を開けて、コップに注いでくれるミサキ。
「キ、キミも飲むか?」
「あら。それじゃあ、いただこうかしら」
「あ、あたしも!」
「お前はまだ早いだろ」
滑稽だ。朝にはこいつの正体を聞いただろうに。抜け出せなくなってしまっている。
夕食を食べ終えると歯磨きし、また三人別々で眠った。
「あなた、そっちに行ってもいい?」
真夜中、ミサキが闇の中でささやく。
「駄目だ」私は拒絶する。「私に、色仕掛けは効かんぞ」
「……そう」
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