家族にドロボウされた

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「あなた、ご飯ができてるわよ」妻役の女は朝食を用意してくれていた。  朝の五時から湯気の出るご飯と味噌汁。あれ、うちにもこんなお茶碗あったか。見るとしっかりとした焼き物で、私のは一〇〇円ショップので済ませてなかったかなと。 「あ、それは私達が持ってきたものです。ふふっ、オシャレでしょう。ご飯は器が大事ですよ。器次第でどんなに良い料理も悪くなり、逆に悪いものが良くなる」  家族のことみたいですね、と言わんばかりの笑顔で語る妻役。 「パパ、黙ってないで早く食べないと。仕事に遅刻しちゃうよ?」  柔らかそうなスクランブルエッグ、焼かれたベーコンがメインのおかず。で、さっぱりと食べやすそうにスライスされたタマネギのサラダ。ドレッシングは醤油をつけた大根おろし。  いただきます。  三人で言い、食べる。 「それと、私達のことはこれからは名前で呼んで下さいね」 「あたしね。アカリって言うんだよ! パパ!」  本当のパパだったら、そんなこと言われないだろうがな。これからは――か。  いつまでのことだろうな。 「私はミサキです。試しに呼んでみてくださいよ」 「誰が呼ぶか」
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