家族にドロボウされた

9/18
前へ
/18ページ
次へ
「ふふっ、いずれ呼びたくなりますよ」  ミサキとアカリ……岬と灯り、か。何て皮肉な名前だろうな。いつか、こいつらは出て行くというのに。ドロボウだと、自分から語っていたというのに。おそらく、本名じゃなくて、コードネームみたいなものだろうが。あまりにも残酷すぎる。 「キミ達は何なんだよ。そもそも、こんな子供まで巻き込んで」 「あ、ぶっちゃけるとね。あたし成人しててね」  目を見開く。貪るように温かいご飯を食べていた私の箸が止まる。 「あー! そんな驚くことないでしょ。見た目、すごく若く見えるからかなー」 「でも、実を言うと私より年う」 「ママ! 余計なこと言わない!」  ほんとに余計すぎる情報で困る。こいつら、こんなことも平然と答えるのか。  家族になれば通報しないでしょと言うこのドロボウ達。最初は頭おかしいんじゃと思ったが――冷静になると、上手いこと考えたと思う。事実、私は彼女達を離せなかった。それほど、一人の夜、孤独、は歳に響くのだ。  だが、こいつらはリアルな情報も語る。遊園地の着ぐるみが子供達の前で脱ぎ始めるようなものだ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加