家族にドロボウされた

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 1  家に帰る道すがら、侘しい我が家を思うと悲しくなった。  音はなく灯りもない、私が家を出たままの光景が広がるのだ。  1LDK、八畳間くらいの住まい。がんばって勉強してきてこんな有様だ。  家に着く。 「ただいま」  返事はない。空しいと思いながらもコンビニ弁当を丸テーブルに置いた。テレビを点けてバラエティ番組の自分よりも年下の芸人がギャグを披露し、私よりも年収多いかと考えながら弁当を食べる。買った麻婆丼は手品でも使ったかのように量が少なく、ストロング缶を開けてテレビの笑い声をBGMに悲しさを紛らわせた。 「……くそっ」  だが、酒を飲むと眠くなった。私の体質的に合わないようだ。じゃあ、酒を飲むなという話だが、それはそれで心が持たなくなる。精神と肉体はどうして仲良くしてくれないものか。結果的に肝臓も悪くなるし、これから報告書作成もあるのにそれもめんどくさくなる。悪いこと尽くしで、それでも酒を飲むのだから私が出世しないのも仕方ないのかもしれない。結局、私はろくに着替えもせずに眠りに就いた。BGMはバラエティ番組からニュース番組、そして何も放映されない空白になり、それは朝まで続いた。
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